今回は『リーダーの仮面 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法』 というビジネス本を紹介しようと思います。
- 書名:リーダーの仮面 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考
- 著者:安藤広大
- 発行日:2020年11月25日
- 出版社:ダイヤモンド社
- 定価:本体1,650円(税込)
「識学」とは、組織内の誤解や錯覚がどのように発生し、どのように解決できるか、その方法を明らかにした学問です。
2019年度に新規で上場した会社のうち、7社が識学を導入しており、「いま、最も会社を成長させる組織論だ」と、口コミで爆発的に伸びています。
この本は、そんな識学のメソッドを元に、「若手リーダー」に向けてマネジメントのノウハウを伝えるものです。
初めて部下やスタッフを持つような人、いわゆる「中間管理職」を想定しています。
最初のリーダーの失敗は、その後のキャリアにおいても、課長の失敗、部長の失敗、社長の失敗、フリーランスの失敗、創業者の失敗へとつながります。
本書の内容は、人の上に立つ立場の人であれば、誰しもが気づきを得られるものになっています。
【こんな人におすすめ!】
- 初めてリーダーを任された人
- 近い将来、リーダーを任される人
- 部下に好かれるリーダーが、いいリーダーだと思っている人
この記事は5分ほどで読めます。
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「ルール」の思考法
会社という組織を運営するにあたり大事なことはルールをつくることです。
リーダーが最初にやらなければいけないことは、売上を上げることや職場環境を良くすることではありません。
現場レベルでのルールをつくることがリーダーの最初の役目です。
ルールは「誰でも守れる」が絶対条件
リーダーはルールを作り、それを守らせることが役目です。
ただ、毎日新規得意先を5件獲得するというのは誰でもできることではありませんよね。
リーダーがつくるルールは誰でも守れることでなければいけません。
例えば、出社したら挨拶をする、勤務開始の5分前には出社して自分の席についておく、机の上を整理整頓して帰社するなどは誰でも守れますよね。
本書には、ルールをつくり、守らせることで、会社の一員なんだ、仲間なんだという意識を持つことができると書かれています。
そして、それを口頭だけでなく言語化することも忘れてはいけません。
言った言わない、聞いた聞いていないという違う問題が発生するので、メールや共通ファイルに残しておきましょう。
「リーダー失格の行動」とは何か
リーダー失格の行動とは、部下が上司を好きか嫌いかでルールを守るか守らないかを決める状況をつくってしまうことです。
普段から優しい上司は好きだから、この人の言うことは聞こう。でも、いつもイライラして厳しい上司は嫌いだから、この人の言うことは聞かない、という状況を生み出すことは絶対にしてはいけません。
普段からルールを言語化し、しっかりと守らせることが重要です。
そうすれば、そこに感情は生まれず、好き嫌いで上司の言うことを聞く聞かないという問題は発生しなくなります。
以前の職場でこんなことがありました。
4月に入った2人の新入社員が2ヶ月で2人とも辞めてしまい、当時のリーダーが上司から、「普段からコミュニケーションを取っていた?声をかけていたの?」と指導されていました。
他の職場でもよくある光景ではないでしょうか。
この上司は、社員が辞めた問題をコミュニケーション不足問題にすり替えてしまいました。
識学を用いた場合、人間関係という問題を気にせず業務に遂行できるルールをつくることが問題への解決の糸口となります。
「ダメなルール」はみんなを混乱させる
リーダーが部下にルールを守らせるときに大事な2つのポイントがあります。
- 主語を曖昧にしない
- 誰が何をいつまでにやるかを明確にする
この2つを満たしていないルールは全てためなルールに当てはまります。
まずは、自分を主語にしましょう。
リーダーである以上、部下と同じ目線に立ってはダメです。
本書でも、これはリーダーとして絶対にNGと書かれています。
例えば、
「明日行く取引先の社長は、待つのが嫌いだからなるべく早く行った方が良いよ」
「プレゼンの資料早く作らないと部長が怒るよ」
「患者さんが困っていたら声をかけるのが普通だよね」
「電話は新人が取るべきだよね」
部下と同じ立ち位置にいると、リーダーは上司ではなく仲間感覚となってしまい、部下の成長が止まってしまうのです。
周りからは責任逃れと思われても仕方ありません。
また、誰が何をいつまでにするかも明確にしましょう。
ルールがはっきりしていないと牽制して疑心暗鬼になり問題が増幅します。
以前の職場で実際に起こったことです。
この職場では電話は5コールまでに出るというルールがありました。
ただ、誰が出るかの明確なルールはなかったため、5コールまでは全員が牽制して、5コール目でようやく誰かが電話に出るという状態でした。
そして、5コール目で電話に出る人が固定化されてきたことで、いつも電話に出ている人から「〇〇さんは電話に全然出ていない」という不満が出たのです。
この後、曜日ごとで電話に出る順番を決めたことで、この問題は解決しました。
「位置」の思考法
リーダーの位置を理解し、リーダーが決めれることはリーダーが決め責任を負いましょう。
部下からの情報や意見を上司に報告するだけでは、ただの伝言役です。
位置によって「見える景気」が異なる
出世し役職が上がれば上がるほど、見えている景色が変わってきます。
そのときに重要なのが、「今」に視点を置くのか「未来」に視点を置くのかです。
あれだけうるさく「歯を磨きなさい」「勉強しなさい」と親が言ってた理由が理解できるのは、「今」ではなく「未来」ですよね。
ビジネスにおいても同じです。
優しい上司は今の部下にとっては良いことかもしれませんが、未来の部下にとっては成長できない原因となってしまうかもしれません。
ストレスのない「正しいほうれんそう」をしているか
本書では、正しいほうれんそうは機械的なほうれんそうと書かれています。
部下からのほうれんそうに対して、毎回褒めたり、毎回叱ったりなど感情できな評価をする必要はありません。
むしろその感情的な評価により部下がほうれんそうをするのが億劫になってしまいます。
機械的に事実だけを聞くことを心がけましょう。
学校ではなく「塾」を目指せ
学校の担任の先生も塾の先生も楽しい人だったら嬉しいですよね。
ただ、次の場合どちらの方が嬉しいですか?
- めちゃくちゃ厳しいけど志望校に絶対に合格させてくれる先生
- めちゃくちゃ優しくて楽しいけど、志望校には受からない先生
①ですよね。
仕事も同じです。
自分を成長させてくれる仕事場を部下は求めています。
小集団をつくってしまう「残念なリーダー」
本書では、「言ったもの勝ち」をつくってしまうとその瞬間組織は終わると書かれています。
例えば、社長や経営陣のルールが気に食わなくて、現場の人間だけで結託し、自分達とのルールを取り入れないと辞めることをチラつかすパターンです。
辞められると困るからと従ってしまうと、言ったもの勝ちが成立してしまいます。
もしこのようなことが起きた場合は、「この会社のルールが気に入らないなら辞めてもらって構わない。ただし、残るならここのルールに従ってもらう」と毅然な態度を示さなければいけません。
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「利益」の思考法
どこまで行っても「組織あっての個人」
サラリーマンでもフリーランスでも、社会全体で見ると組織の一部です。
なので、会社で評価されない人が独立しても成功することはほぼないでしょう。
逆に、会社で評価されている人は独立しても成功する確率が高いです。
本書では、会社でうまく使われることを意識した方が成長が早いと書かれています。
もし独立したいのであれば、会社で成長するのがいちばんの近道かもしれません。
いい緊張感が部下の成長につながる
今の時代いつ会社が潰れるかもわかりません。
もし会社が潰れたときに、自分には何が残っているのかと恐怖を覚えると成長できる兆しです。
このままじゃダメだという危機感が、それを乗り越えようとすることで人は成長します。
それを部下に感じれもらうために必要なのが「いい緊張感」です。
目標を達成できなくても叱られないし、同僚と話をしていても注意されないし、友達みたいにフランクに話ができるリーダーの元では、いい緊張感は生まれません。
その結果、部下は成長せず、自分自身の存在意義もなくなり、会社から必要とされなくなります。
仲良くしないことへの恐怖よりも、このままの状態が続くことでやってくる未来の恐怖に怯えるべきです。
事実だけを拾い、「言い訳」の余地をなくしていく
いい緊張感を持ってもらうために必要なことが、言い訳をなくしていくコミュニケーションです。
曖昧な言動を数字に置き換えてみましょう。
例えば、
「今日は雨で車が渋滞していたので遅刻しました」
「雨の時は渋滞するからね。次からは気をつけるように」
「今日は雨で車が渋滞していたので遅刻しました」
「雨の日の出勤は初めてではないですよね?なぜ遅刻したのですか?」
「・・・」
「雨の日は渋滞することは理解しているはずです。今回は10分の遅刻なので、次回からはいつもより10分早く家を出発するようにしましょう。」
感情的に叱咤するのではなく、あくまでも事実だけを確認し、言い訳の余地をなくしましょう。
競争をできるだけ「可視化」すべき理由
最近ではリレーの競争をなくして、みんなでゴールを目指すみたいな運動会もあるみたいですが、社会に出るとそんな甘い世界ではありません。
会社の中での競争はもちろん、フリーランスに至っては周りの全てと競争していかなければいけません。
営業職だと、ホワイトボードに月の売り上げが担当ごとに書かれていることも多いでしょう。
これはあえて数字としての現実を突きつけているのです。
この数字を見て、どう感じるかは個人の自由なので、それに対して最下位の人に1位を目指すことを押し付ける必要もありません。
ただ、社会に出て競争から逃れることはできません。
現実を受け入れることで、社会を生き抜く力を身につけるための「いい危機感」を持ってもらうようにしましょう。
「結果」の思考法
評価には自己評価と他者評価があると言われていますが、評価とは、どれだけ対価を獲得できるかを示した基準です。
つまり、他者から得られるものと結びついた概念なので、識学では自己評価は存在しません。
他者の「評価」からは誰も逃げられない
会社員における他者評価とは、上司からの評価です。
評価されるべき人というのは、仕事ができて成果を出せる人です。
ここで間違いやすいのは、会社で人気のある人や自分と仲が良い人を評価してしまうことです。
これではチームの結果はついてこなくなります。
「客の言いなり」は組織の不利益
お客さんにとっては安く服を買えるに越したことはありません。
例えば、仕入れ値が5000円の服を10000円で売るとしましょう。
お客さんから2枚買うから安くしてよ、と言われ、8000円で売った場合、お客さんは喜び、売った営業マンも売り上げができて喜びますが、会社にとってはマイナスです。
本来5000円の利益が出るのに、3000円の利益しか出なかったのですから。
お客さんのためにすることは大切ですが、それが会社にとって不利益が生じることがどうかが大事です。
リーダーは「プロセス」を評価してはいけない
僕が以前働いてい会社では、残業することが評価の対象となっていました。
残業したり、休日出勤することで、「夜遅くまで頑張っているね」「休みの日まで出勤してえらいね」と社長から評価されていました。
これはプロセスを評価しているのです。
残業することで、人件費や電気代が増加するので、本来なら残業せずに結果を出す人が評価されるべきです。
プロセスを評価しなくなると、労働時間が減り、残業も減り、コストも軽減でき、生産性は上がります。
「成長」の思考法
チームが成長するとき、必ず起きていること
チームが成長するときは、チームのトップにリーダーはいません。
チームのトップには成長が早い部下が先頭に立ち、チームを引っ張ってそれに続くように他の部下も成長していきます。
チームが成長していないトップには、リーダー自身がトップに立ちチームを引っ張っています。
リーダーの役目はチームを管理することです。
「変わった気になる」を徹底的になくしていく
本書では、人は経験とともにしか変わらないと書かれています。
ビジネス本を読んだり、成功しているトップ営業マンや経営者の話を聞いて、自分が変わったような気分になることは誰でもありますよね。
ただ、それらは全て錯覚です。
とにかく経験しないことには何も始まりません。
変わった気にさせないために、まずは「一回やらせてみる」ことが大事です。
過去に自分が経験して失敗したことであっても、部下がやってみたいというのなら一度は経験させるべきです。
それが1番の部下が成長する方法です。
まとめ:リーダーの仮面を被り、じっと待とう!
人間誰しもが人に嫌われたくないですよね。
特に人の上に立てばなおさらです。
部下と和気あいあいと仲良く仕事をしたいと思っている人がほとんどでしょう。
リーダーの役目が、部下が働きやすいホワイトな職場という考えの人も多いと思います。
ただ、これでは結果が出ません。
そして、結果が出ないのはコミュニケーション不足や職場の雰囲気のせいにしてしまい、本来の結果が出ない原因に目を背けてしまうということが起きるのです。
リーダーの役目は部下に好かれることではありません。
部下を成長させることが本来の役目です。
自分や部下の「今」のためではなく、「未来」のためにリーダーの仮面を被りましょう。
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