今回は【六人の嘘つきな大学生】というサスペンス小説を紹介しようと思います。
書名:六人の嘘つきな大学生
著者:浅倉秋成
出版月:2021年3月2日
出版社:KADOKAWA
定価:本体1,600円+税
この小説の見どころは「善人と悪人の境界線」です。
読んでいる途中は周りが全て敵に見えて、読み終わった後には周りが全て味方に見えるような、改めて人の見極めは難しいと考えさせられる一冊です。
殺人、トリック、名探偵、迷刑事、クセの強いキャラ、謎解きなどのサスペンス要素はなく、自分の身の回りで起きても決して不思議ではない内容となっています。
サスペンスが苦手な人やこれからサスペンスに挑戦しようと思っている人にはピッタリな小説です。
ちなみに、本はAmazonで探し、Kindle(キンドル)で購入しています。
昔は紙で読んでいましたが、今はほぼKindleです。
たまに、紙の本も買いますが、Kindleの方が安く、自己啓発本や勉強本はマーカーとかも引けるのでおすすめです。
この記事は5分ほどで読めます。
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【六人の嘘つきな大学生】とは
簡単な概要説明です。
概要
スピラリンクスというスタートアップ企業の最終面接まで残った6人の就活生。最終面接はグループディスカッションで、内容は「こちらから提案する議題を6人でどう解決するか考えてきてほしい」というもの。うまくいけば全員合格の可能性もあると言われる。
「ただ、それは今日ではありません。1ヶ月後となります。」
全員で合格するために1ヶ月間議題について何度も打ち合わせを行い、最終面接日に備える6人。しかし最終面接の1週間前に、面接官からメールが、、
「議題を変更します。【六人の中で誰が最も内定に相応しいか】を議論していただきます。6人のうち1人しか合格はできないので、当日6人で合格する人を選んでください」
そして最終面接当日、グループディスカッションの部屋にある白い封筒が置かれている。
その白い封筒の中身は6人のこれまでの悪事が書かれていた!
一体誰がこの白い封筒を用意したのか、そして誰が合格するのか、、
物語の進み方(書き方)
最終面接で実際何が起きたのかと、最終面接に関わった登場人物にインタビューしていくという二つに時系列で物語が進んでいきます。
最終面接では、1番フェアなやり方である投票で、誰が内定に相応しいか決めることとなります。ただ、白い封筒に書かれている悪事により票がどんどん入れ替わるという展開で進んでいきます。
一方、インタビューの方は8年後の世界です。ある人物が8年前の最終面接に関わりを持つ一人一人にインタビューしていく形式で物語が進んでいきます。インタビューをする人物ですが、途中まで誰がインタビューしているか分からない構成となっています。
最終面接、インタビューと交互に物語が進んでいき、あの時何が起きていて、誰があの手紙を用意して、あの手紙に書かれていることは本当だったのか、ということが解明されていきます。
本書の評価
- 2022年本屋大賞ノミネート
- 『このミステリーがすごい! 2022年版』ノミネート
- 第43回吉川英治文学新人賞ノミネート
- 累計発行部数40万部を突破(2024年3月時点)
- 2024年11月映画化。
【映画化情報】※2024年3月時点
- 公開日:2024年11月22日(金)
- 主人公・嶌衣織:浜辺美波
- 波多野祥吾:赤楚衛二
読みたくなる理由3選
誰もが共感できる内容
就活生が就職活動をしているという普通の内容なので、就活生か就職活動を経験したことがある人しか共感できないのかと思いますが、本書の根本にあるテーマは【人間の表と裏】です。
誰もが見たことある人間の面と裏、誰もが経験していてもおかしくない悪事、その二つが重なった時に生まれる人間の本質が、生々しく描かれています。
緊張感が伝わってくる
6人で同じ目標に向かっていた仲間が、一通のメールと匿名の手紙によって雲行きが怪しくなり、登場人物の裏の部分が顔を覗かせます。
手紙の内容が本当なのか嘘なのか、それさえも分からない状態で、さらに今までのこの人は偽物だったのかと疑いつつ、自分以外の誰かを内定者に選ばないといけない極限状態が繰り広げられます。
また、全員の手紙を読まなければならないように仕組まれているあたりに、人間の裏の部分が見えるのも緊張感を煽る演出となっています。
伏線、そして回収。
何気ない一言や一文が伏線として張り巡らされていて、良い意味で読者を惑わしながら回収していくあたりの構成に引き込まれます。
そして、その回収に人間の面と裏の部分が見え隠れするあたりもテーマとのつながりを感じ、読者の心を鷲掴みにするポイントです。
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感想:本質を見抜かれたくないから嘘をつく
この小説を読んで僕が1番印象に残った一文はこれです。
完全にいい人も、完全に悪い人もこの世にはいない
引用:六人の嘘つきな大学生 浅倉秋成
新入社員の頃や転職した時のことを思い出してください。
〇〇さんには気をつけろよ、〇〇さんは優しいから何でも教えてくれるよ、とかまだ会ったことない人のことの教えてくれる上司や先輩っていませんでしたか?
僕は会社を4社経験していますが、どこにでもこのような人はいました。
最初は親切な人だなと思っていましたが、実際に気をつけた方が良いと言われていた人と接してみると案外優しかったりします。
教えてくれた人にとって悪い人でも僕にとってはそうではないかもしれないと思ったのを覚えています。逆も然りです。
常に怒ってたり、嫌味を言ったりしてみんなに嫌われているような人いますよね。
その時いつも思うのは、仕事以外だったらどうなのだろうと。
もしかして家庭では優しいのかな、気の知れた友達の前ではこうでないのかな、この人たちも必ず良い部分はあるけど、それを見せれていないだけじゃないのかな。
逆にいつも優しいこの人も、裏の顔があるのだろうか。
そう思うと、先入観があっても自然と接することができます。
まさに、完全にいい人も、完全に悪い人もいない、ですね。
僕自身も全然善人ではありません。
でも悪人でもありません。
みんなそうだと思います。
長い人生で嘘をつかないといけない時は必ず訪れます。
何気なく放った嘘が大きく歯車を狂わすことになることもあります。
ただ、その嘘一つでその人がどういう人間か決めつけることはできません。
人間の本質を見極めることなんて何十年一緒にいる夫婦ですら難しいことです。
ここまで人間の本質を見極めることが難しい理由は、『嘘』をつくからではないでしょうか。
自分では分かっているけど周りには悟られていない部分を言われると嫌じゃないですか?
図星というやつです。
本来周りに知られたくない部分なのに、それがバレると、自分の本質を見抜かれているように感じます。
僕らは本質を見抜かれたくないからこそ、知らず知らずのうちに嘘をついているのかもしれませんね。
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