雑記・思い出話

米津玄師が描く生と死の“最後の審判”——“Lemon”が映し出した深層

 

僕らが子供の頃、大晦日といえば紅白歌合戦が定番でした。

 

高校生くらいからは「ガキの使いやあらへんで!」や格闘技番組が

大晦日の定番として浸透してきましたが、

それ以前、1980年代までは紅白が圧倒的な力を保持していました。

 

1960年代から1970年代にかけて、

紅白の視聴率は70%〜80%という驚異的な数字を記録し、

1980年代から1999年までも50%前後、

つまり国民の二人に一人が観ているという状況が続いていたのです。

 

しかし、2000年代に入り、格闘技やお笑い番組の影響で少しずつ視聴率は低下し、

昨年(2022年)は35%ほどでした。

それでも十分に高い数字だと思いますが。

 

僕も中学生の頃は紅白よりも格闘技を好んで観ていました。

ただ、好きなアーティストが出るときだけはチャンネルを切り替えながら観ていたのを覚えています。

特に、紅白初出場時のMr.Childrenの「GIFT」には、かじりついて観た記憶があります。

 

そんな僕が、これまで何度も紅白を観てきた中で、

最も衝撃を受けたのは米津玄師の「Lemon」のパフォーマンスです。

 

大塚国際美術館で披露された「Lemon」

 

「Lemon」という曲は『アンナチュラル』というドラマの主題歌でした。

『アンナチュラル』は遺体を解剖し死因を特定する法医学ミステリードラマです。

 

なぜその人は死に至ったのか、なぜ死を選んだのか、

死因が解明されることでその人の人生が浮かび上がってくる、

生と死をテーマにした深いドラマでした。

 

そして、「Lemon」はこのドラマのために書き下ろされた曲です。

 

米津玄師は紅白のステージで歌ったのではなく、

彼の地元・徳島県にある大塚国際美術館からの中継でした。

 

大塚国際美術館は、西洋の名画を原寸大に複製して展示する陶板名画美術館です。

 

彼はその美術館に展示されたミケランジェロの『最後の審判』の前で

「Lemon」を披露しました。

 

「最後の審判」と聞いても、すぐに思い浮かばないかもしれませんが、

検索して確認すれば「あ、見たことある」と思うはず。

とても有名な絵です。

 

曲と演出が完璧にマッチしており、

幻想的な雰囲気と米津さんの独特な声、そしてダンス。

一つの芸術作品を観たような気分になりました。

 

米津玄師が描く生と死の“最後の審判”

 

長い暗闇の廊下があり、左右には蝋燭が並んでいて、

僕たちを導くように明かりが灯っている。

その先の扉が開くと、スポットライトを浴びた米津玄師が立っていました。

 

足元にはいくつもの蝋燭が並び、まるで生きているかのような揺れる光が漂い、

背景にはうっすらと暗闇に浮かぶ「最後の審判」。

 

そして、歌が始まるという演出です。

2番からは一人の女性ダンサーが登場し、演出がさらに深まります。

 

2番の終わり、大サビに入る前、ダンサーはカメラに背を向け、

米津玄師の方に向かって座り、祈りを捧げるように手を合わせる。

 

「最後の審判」は、イエス・キリストが人々を天国か地獄に振り分ける場面を描いた絵です。

清く正しく生きなければ、地獄に落ちるという教訓が、この絵には隠されています。

 

アンナチュラルが描いた「生と死」のテーマ、そのテーマのために書かれた「Lemon」、

そして「清く正しく生きる」という「最後の審判」のメッセージ。

すべてが見事にリンクし、一つの完璧な作品が完成されていたのです。

 

そして極めつけは、蝋燭の存在です。

蝋燭の火は、祈りの場所を示し、神が降りてくるための目印とされています。

 

僕は、米津玄師が「Lemon」を通して、

生と死について神に祈りを捧げているという演出だと感じました。

 

暗闇の中で微かに揺れる蝋燭の光が「生きる喜び」を表し、

激しいダンスが「怒り」を、米津玄師の歌声が「哀しみ」を表していた。

観客は、この圧倒的な演出を心から楽しんだことでしょう。

 

僕もその一人として、本当に感動しました。

この演出を超える表現力が今後生まれるのだろうかと、思わず考えてしまったほどです。

 

米津玄師がどれほどこの演出に関わったのかはわかりませんが、

彼の「Lemon」という曲がなければ、この感動は生まれなかったのは確かです。

 

米津玄師は、この紅白を観ていた全員の光となったのではないでしょうか。

僕もその光に包まれた一人でした。

 

いつか、僕もこんな風に言われたいものです。

 

 

「今でも、あなたはわたしの光」

 

 

 

今日が誰かにとっての一番良い日でありますように。

 


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ABOUT ME
ごりすけ
ごりすけの成長ブログのオーナーであり、「行動+継続=成長」がモットーのメインブロガー。 大阪府在中で妻と息子と娘の4人家族。普段は小さなクリニックの事務で働いています。 毎週金・土・日に様々な記事を投稿していきます。
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