靄がかかっている、という表現が一番近いかもしれません。
今回のブログテーマは『僕等がいた』です。
僕ら世代、そしてもっと若い世代にも、このタイトルにピンとくる人は多いでしょう。
そう、大ヒットした少女漫画です。
映画化もされましたね。
この漫画は大きく分けて前編と後編に分かれています。
前編が遠距離になる前の物語、後編が遠距離後の物語。
今回は前編に焦点を当ててみます。
この前編に関して言えば、恋愛の全てが詰まっていると言っても過言ではないでしょう。
それほど完成された恋愛漫画です。
物語の中で、矢野という男の子は過去に付き合った彼女を事故で失います。
そしてその過去をずっと後悔し続けているのです。
現実世界に置き換えれば、過去の恋愛を引きずっている状態と同じですね。
主人公の高橋(女の子)は、その過去に縛られている矢野に嫉妬を感じます。
これも、現実でよくある元カレ元カノへの嫉妬と似た感覚でしょう。
「元カレとここに行った」「元カノは料理が上手だった」「カッコよかった」「可愛かった」……でも、過去と今を比べることはできませんし、その恋愛自体をなかったことにもできません。
この変えられない過去に苦しみつつも、二人が成長し愛を育んでいく物語が前編です。
実はブログを始めた時からいつかこの作品について書こうと思っていました。
でもなかなか書けなかった。
最初に述べた通り、靄がかかっていたからです。
『僕等がいた』は何度も読んだことがあります。
というのも、妻が持っていたので今でも家にあるんです。
それで何度も読み返してみたのですが、この漫画の良さをうまく言葉にすることができなかった。
心の中に靄がかかっているような、掴もうとしても掴めない、
目を細めても見えない、でも何となくはわかる。
そんな、くっきりとした情景が浮かばないような感覚なんです。
読むたびに、心の奥が軽く締め付けられるような感覚に襲われて、
読み終わった後には少し憂鬱な気持ちが残る。
この漫画の何が心をこんなにも動かすのか、その答えを見つけたくて、
何度もページをめくりました。
そしてようやく、僕なりの答えに辿り着くことができたんです。
『僕等がいた』を読んで胸の奥が痛くなった人は、
過去に本気で誰かを好きになり、そして別れを経験したことがある人でしょう。
この作品は、恋愛の甘さも苦しさも、
そして別れの痛みまでも鮮明に蘇らせる力があります。
恋は盲目、とよく言いますよね。
恋愛中は「この人しかいない」「この人が運命の人だ」と思い込んでしまう。
それは、その人のことを本気で好きだから。
「この人と出会うために自分は生まれてきたんだ」なんて感じてしまう。
でも、失恋した後には「もうこれ以上好きになる人なんて現れない」と思いがちですが、
実際にはそうではありません。
時間が経てばまた誰かを好きになり、その人が特別な存在になる。
そしてまた恋は盲目に……。
良い思い出も、悪い思い出も、過去の恋愛は心に残り続けます。
その思い出を振り返るたび、心が温かくなったり、
少し痛んだりするのはそのせいでしょう。
悪い思い出だけを消し去ることはできません。
だから、書き換えることのできない過去を受け入れるしかない。
これはとても辛いことですが、それでも人はまた新しい恋をし、未来を築いていくのです。
では、なぜ『僕等がいた』がこんなにも心に響く作品なのか。
それは、おそらく、過去の恋愛を思い出させてくれるからだと思います。
その恋愛が良いものだったのか、悪いものだったのかは人それぞれでしょう。
でも、どんな恋愛であっても、それは確かに自分が生きてきた証です。
過去は変えられない。
だからこそ、今目の前にいる人を大切にしたいと感じさせてくれる。
あの時、何を好きだったのか、何に夢中になっていたのか、何に笑い、何に泣いたのか。
今となっては細かいことは思い出せません。
ただ、『僕等がいた』を読むと、あの頃の恋愛がどうだったのか、
その感覚だけは心に蘇ってくるんです。
そしてその時、僕らがいた。
確かにそこに、恋に一生懸命だった僕等がいた――そのことを思い出させてくれるのです。
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